御大です。わお。
社会の問題について、「そもそも」から考え直すよう迫る人は、アメリカでは無政府主義者などとみなされ危険視されたりするようですが、この国ではめんどくさい人として鬱陶しがられるだけでとりあってもらえずに終わる。
周囲の人に署名を頼めば、みんな喜んで名前を書いてくれるだろうけど、かれらがそうする理由は、趣旨に賛同するからじゃなくて、依頼人のあなたがお友達(あるいは家族)だからだ。説明したところで、「なるほど、勉強しているね」で、半日後にはなにについて署名したかも思い出せなくなるのがふつう。
あることについて、だれかに「その人自身の意見を持たせる」ところまで持っていかせるのは難しい。話を聞いてもらうのより難しい。脳はカロリーをたくさん消費するらしいので、だから人間は考えさせられるのを極力避けるのかもしれない。
今回の短いエッセイについても、何人かが「はてなブックマーク」に入れたりして、当座の読みものとして一部の人の興を満たして終わるだけなのかもしれません。しかしそういう人たちはこの話題についてはもう相当の議論に目を通している面々というような気がします。つまりあんまり意味ないのではないかと。
また英語圏には英語圏流の理屈の進めかたというのがあるので、これがそのまま日本で「知的財産」について考える入門としては向かないのかもしれないし、だれか詳しい人がそういうやつの「日本版」を書いてくれたりしたらいいのになあ、と思ったりもします。
そうはいっても、これが発表されてから二年たつというのにいまだに翻訳されていなかったというのは、ちょっと意外でした。なにもないよりは、少しでも議論の踏み台があったほうがいいだろうとも思いますし、そういうわけで……。
更新情報
リチャード・M・ストールマン (Richard M. Stallman) さんの Did You Say “Intellectual Property”? It’s a Seductive Mirage の日本語訳、「『知的財産』だって? そいつは砂上の楼閣だ」を公開します。公開前にレビューをしてくれた友人に感謝。