「ファイアーエムブレム」のために DS を買ったものかどうか迷う。
清少納言松島日記
「清少納言松島日記」という旅日記があるのです。これは「老尼となった清少納言が、都から陸奥国の松島に下ったときの旅日記」
ということなんですが、じつはそういう設定で書かれた、後世による偽書です。引用した説明は「日本古典偽書叢刊」第二巻のもの。そういう叢書があるんだねえ、と思った。松島日記は、9ページしかない短い文書です。あとかわいい挿絵付き。
同書の解題によると、
近世には清少納言晩年の紀行文として重視され、たとえば、伊勢貞丈は本日記を清少納言の自著と断じて考証を進めた。しかし、本居宣長が『玉勝間』で「めづらしくおぼえて、見けるに、はやくいみじき偽書にて、むげにつたなく見どころなき者也」と評して以来、現在では偽書と認めるのが妥当とされている。
「日本古典偽書叢刊」第二巻、p. 28、現代思潮新社、2004年
というものらしい。伊勢貞丈(いせさだたけ)は、ウィキペディアによると江戸時代の有職故実研究家。本居宣長とほぼ同時代の学者ですね。『玉勝間』での言及は二の巻の「松島の日記といふ物」という段にある(こういうとこをちゃんと書いてくれないと、探す側としては困るのよ)。
内容は、「道中行きずりの人々が親切にしてくれる」といった、清少納言が書きそうもないこととか、山で夜を越していると麓の里で火が起きて村がすっかり焼けてしまったが居合わせた僧や翁はちっとも驚かないといった、いかにもなエピソードだとかです。解題に「鎌倉期の往生観念の影響が見られる」とあるように、どことなく無常観が漂う文章で、このことも鎌倉期以降成立という偽書説の根拠のひとつである、と。
しかし内容を云々するよりも、これは文体をみれば一目瞭然で、一条院時代の文章とは随分違った感じです。有職学者としては「いい話だから本物だよきっと」ということなのかもしれないけど、宣長にしてみれば冗談じゃないと思ったことだろう。というのも、この日記では係り結びがぐだぐだに崩壊している。
「や/か」…(連体形)の文は、終止形と連体形が同型の語しかないので、どちらが使われているのか判別しがたい。
- 木の丸殿にあらぬ嫗の旅、誰しか名のりごち咎めんかし。
- いとどしく、后の宮の御面影、御堂殿の御栄えの末も、夢よりはいくらかまさりけん。
「や」は終助詞的な使い方が多いです。「いくらか」は副詞的で、係り結びを意識していたかどうかはこれだとよくわからない。
「こそ」を使ってる文がふたつあるけど、已然形で終わるのはうやむやな感じ。
- ……十日ばかりさすらうてこそ、武蔵野の末の古河(こが)の渡りといふに至る。
- ……「逆さまなる仏事は仏の厭ひ給ふこと」とこそ、何がしの経に侍るものを、さいへど、善を積みて、我を罪にも落とせね、さはれ、生きとまるべき身にし侍らぬ。
前者は完全にアウトだし、後者は「いへ」「落とせね」(これは命令形「落としね」の誤かと註に)がそうかなあ、と言えば言えないこともないけど無理がある。「ものを」は順接・逆接の条件を表す接続助詞だから、「こそ……侍れ、」としてれば確実だったんですが。また逆に、この「侍り」の箇所で已然形が出てこなかったことが係り結びの崩壊している証拠になってしまっているような気がする。
「なむ(なん)」を使っている文もいくつかあるけど、どれもなんとなく名詞で終わっているか、終止形と同形の動詞で判別できない。
- 石山の方、三井寺の方の行く雲をなむ、在五の朝臣のごと、「うらやましく」などと独りごちぬる夜まれなり。
- ゆくゆくとしもなき旅になんありぬることよ。
後者は「なんありぬる。」でびしっと終わってたらよかったんですが、あとに名詞の「こと」を続けてしまいました。
「ぞ」…(連体形)の例はない。
こういう細かいところが積もり積もって、全体として読んでいてぐだぐだの印象を受けるわけです。「すかっと已然形で終わらせろ!」と宣長先生も息巻いたに違いない(註:宣長は已然形という言葉は知らなかったはずだけど)。
- 里にまかでたるに、殿上人などの来るをも、やすからずぞ人々いひなすなる。
- にくしと思ひたりし声ざまにていひたりしこそ、をかしかりしにそへておどろかれにしか。
- なにしにかは、知らずとはいひし。
上は枕草子から適当に抜いたものですが、このように曖昧さなく、びしっとした例がいくらでもあるのです。終止形はそれぞれ「なり」「き」「き」なので、どれも明らかに連体形と判別できる。こういう明らかな例が松島日記からは見つからない。
松島日記を読んで宣長が「俺の『手枕』はもっとびしっとしてるぜ」とか思ったのかどうかは定かではない。
ストリートファイターIV
駅前歩いてたらゲームセンターに幟が立ってたので入ってみたところ稼働してました。やってみると「スパ II X」に近い操作感。「III」は神業的な人のプレーを見るのは楽しかったけど自分ではついていけなかったから、駆け引きのバランスとしてはこれくらいが丁度いいのかも。
新宿だとレベルが高すぎて入る余地がないので地元でこつこつ修行をする。